Op.54 さようなら鶴子さん【♪】

2020年11月09日

私は3年前から、毎週火曜、施設でピアノを弾かせて頂いています。
コーヒータイムのBGMを30分。
みんなで歌ったりするのが60分。

今日は利用者さんの中でも最も音楽に興味を示してくださった鶴子さんのお話です。

特に映画音楽やバレエ音楽がお好きで、弾いて差し上げると
「映画館で聴いたわ」
「劇場に観に行ったわ」
時には
「女学校の時、合唱した曲よ」 

と、反応を示してくださり、鶴子さんがいてくれると、弾いていてこちらも楽しくなります。

綺麗な白髪に鼈甲色のリボンの髪飾り、青紫色系のお召し物、気品あふれる鶴子さんは、いつも1番ピアノの近く、私の斜め後ろが指定席でした。
2週間前、   
"お部屋に鶴子さんが見当たらない。今日は休みかな"

と思っていたら、奥のお部屋のベッドの上。
ご家族の方もいらしていて、もう長くないということ。

いきなりの事でびっくりしましたが、それでは、と
「今日は90分鶴子さんスペシャル弾きますね」と伝え、
鶴子さんがお好きそうな曲をたくさん弾きました。
その日もベッドの上で、曲の感想をいろいろ言ってくださいました。

次はお会いできないかも?

いやいや、もう一度会いたい!!一心で
帰るとき
「来週火曜、また来るから。たくさん弾くからね。約束火曜ね」(来週まで生きててよ!!)の気持ちを込めて、帰りました。

その1週間、ずっと気になりながら過ごしました。

火曜がやってきて、朝早めに向かい、真っ先に病室へ。

...もう意識はなく、酸素吸入している中、それでも声をかけて、
「今日も鶴子スペシャル弾きますよ」と言ってはじめました。

きっと聴こえている!と信じて。

いつもの90分プラスお昼までの許される時間まで弾き続け、
最後に心地よく天に舞っていかれるように
ルービンシュタインの

♪「天使の夢」とチャップリンをこよなく愛していた鶴子さんに代表作「ライムライト」より♪「エターナリー」を弾きました。

...

その日の夜、鶴子さんは天に召されました。
やっぱり火曜を待っていてくれたんですね。

明日は火曜日。
鶴子さんがいない施設。


淋しいけれど、施設にいる元気な皆さんのために、これからも
弾き続けます。

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